7月1日より飾り山の一般公開がはじまりました。
7月15日早朝の追い山のクライマックスまで、博多の街は山笠一色となりました。
山笠の基礎知識は、いろんなサイトでご紹介されております。
当サイトでは、山笠エリアに住む方々に突撃取材をして、山笠のホットな情報をまとめてみました。
に続きまして今回は、
『博多祇園山笠、全7流インタビュー編』をお届けします。
今回の記事は、かなりマニアックな内容となっております。
先に、
の2つをお読みいただいたうえで、お楽しみください。
山笠の関係者に質問してきました!
各流の一部の町内の方々に、山笠について質問をさせて頂きました。
質問の内容
- 舁山(かきやま)でのポジション※1
- 町内での山笠の内容について
- 赤手拭(あかてのごい)について※2
- 直会(なおらい)のメニュー※3 などです。
文中に出てくる山笠用語について、簡単に説明します。
- ※1 舁山(かきやま)のポジションとは?
- 走る山笠(山)は総重量が約1トンあり、24名~が、山を舁き(担ぎ)走ります。
まずは、山笠の下記の(図1)をご覧下さい。山笠は表と裏(見送り)それぞれの棒に24人、胡瓜舁2人、鼻持ち、後押しなどで構成されております。
総重量1トンもある山笠を担いで走るので、数十メートル走るごとに次々と担ぎ手が走りながら交代して行きます。
(図1) - ※2 赤手拭(あかてのごい)とは?
- 山笠を熟知した舁き手、若手の指導や取締りの補佐などを行い、現場の第一線で活躍します。一人前になったと認められた人だけに与えられる名誉ある役職です。
山笠役職の手拭
各流によって役職の種類が異なります。 - ※3 直会(なおらい)とは?
- 山笠は氏子の神事です。神事の終わりにお神酒を頂いたり食したりする儀式です。
櫛田の紋が胡瓜の輪切りに似ていることから、山笠期間中は胡瓜を食べません。
一番山 土居流
山笠委員 松田 憲三さん
生れも育ちも博多っ子 親子代々山笠に出ています。赤手拭(あかてのごい)は24か25歳ごろより10年間を経て、今年は濱小路が当番町となったので、一番山の山笠委員となりました。
- 舁山(かきやま)でのポジション
- 三番棒 台下、鼻取り
- 町内での山笠の内容について
- 12町内からなり、合併した町内などを総合して、6町内で順番に山笠の運営をしています。
今年は、うちの町内が当番町のため町総代をしております。
一番山 土居流。当番町、濱小路にて
長法被を着た赤手拭親子
山笠の参加者は、地元が2割で、残りは元、地元に住んでいた人などと知り合いです。山笠を担ぐ時の交代間隔は、大体30~40mくらいです。子供が少なくなったので、子供連れの方が参加されると嬉しいです。
一番山の町総代は、7月13日の集団山見せの時に台上がりをします。今年は一番山なので、台上がりは両袖に福岡市長、市議長が座ります。
- 赤手拭(あかてのごい)について
- 赤手拭の人数は決まってなく、毎年12月の初めに役員が後継者に相応しい方に決めます。
はじめて赤手拭を貰った時は、あこがれの赤手拭、若手の役職なので嬉しかったです。 - 直会(なおらい)について
- 7月9日~15日まで、役員の「ごりょんさん」(奥さん)が直会の献立を仕切ります。
鉢盛、揚げ物、玉子焼き、おにぎりなど 14日はカレーの日。11日、15日の朝山には貝汁が付きます。貝汁は、すまし汁にします。味噌は(みそがつく)ので入れません。
二番山 大黒流
阿部 隆一さん
広告代理店社長、釣りのインストラクター。16年間、東京で広告のお仕事をされて、長男だった事もあり、34歳の時に博多に戻りました。
- 舁山(かきやま)でのポジション
- どこでも
- 町内での山笠の内容について
- 大黒流れは、12町内からなり、町ごとに、それぞれの決まりごとがあります。
山笠の所属町内は「すノ二」 水法被には、ひらがなで「い」と書かれています。長法被は市松模様 流通柄である為、安価です。
大黒流は氏子の神事 博多どんたく「松ばやし」と「博多祇園山笠」に出る町内で、昔からの伝統がある地域です。山笠は、年代が増すたび、おもしろくなってきます。 - 赤手拭について
- 帰郷後、すぐに赤手拭のお話がありましたが、随分山笠を離れていた事もあり辞退しました。その後、地域に貢献し36歳に赤手拭を貰いました。
博多に戻って再び山笠に出たときに、昔出ていた仲間が激減しており、山笠の形態が随分変わっていた事に驚き、昔ながらの氏子の神事に則った山笠の体系に立て直しを行いました。 - 直会について
- 「ごりょんさん」が各町内でメニューを考えています。もつ鍋、鉢盛、カレー、ぜんざい、朝山の時は豚汁、追い山の時は貝汁が付きます。
大黒流 すノ2詰所 「ごりょんさん」の調理場
大黒流 「ごりょんさん」
ビューティサロン東京堂 代表取締役 増江 満香さん
- 直会について
- 当番を決め、日替わりでメニューが変わります。
こぶ、するめ、かまぼこ、カレー 14日ぜんざい 15日追い山は貝汁を作ります。
大黒流 K.Tさん
地元に親子代々で住んでおられる山笠一家です。現在、息子さんは赤手拭で活躍されております。
- 舁山(かきやま)でのポジション
- 一番左肩外側
- 赤手拭について
- 初めて赤手拭を貰ったときは、やっぱり嬉しかったです。
山笠が好きで、お嫁にきた方もいらっしゃいます。 - 直会について
- うちの町内は「ごりょんさん」が少ないので、「ごりょんさん」の事を考え簡単にできて美味しい、日替わりの鍋料理が多いです。
三番山 東流
下東町(中呉服町) 町総代
株式会社 ビックス 代表取締役社長 山口 浩志さん
- 舁山(かきやま)でのポジション
- 表右入り
- 町内での山笠の内容について
- 東流は、当番町制度はなく、19町全町内で山笠の運営当番を行っている。
山笠は1か所の決まった場所に置かれます。
東流は、場所の関係上、飾り山と舁き山が共用になっています。
舁き山が出ている時は、飾り山の上部が山小屋に固定されているのが確認できます。
3か月に1度は、弁天講、東会(あずま会)などの会合があり、親睦を深めております。
櫛田神社の中心にある、山笠の櫛田入りの際に回る清道の旗は、代々下東町が立てています。
山笠の受け入れは、基本町内の年間行事に参加出来る事が条件
山笠は櫛田神社の氏子としての神事である事、舁き山等を練習と勘違いしている人が多いが、櫛田入りだけでなく全行事が神聖な神事である。
長法被は、山笠の正装であるため、行事以外は着用しません。
- 直会について
- するめ、昆布、蒲鉾、かち栗、魚、お神酒など
古式に則った、直会の神事を神聖に行っております。
奥堂 野村さん 居酒屋 奥堂店主
- 舁山(かきやま)でのポジション
- 表の3番左
- 町内での山笠の内容について
- 山笠に70名参加 うち地元が約20名 常時40名位が交代で参加
15日の追い山は基本全員参加している。他の参加組は、町内の行事に参加してコミュニケーションを取る事が基本。 - 赤手拭について
- 男の勲章で20~25歳位になる頃に辞令がある。若手の指導、礼儀、実力等が条件
赤手拭を貰う事は、一人前の男として認められたという証である事から、昔は赤手拭になったら、お嫁さんが来た。という事もあったそうです。
初めて赤手拭を貰った時は嬉しくて赤手拭を抱いて寝る人もいるそうです。
奥堂の赤手拭は、町内で4名(昔は2名だった) 但し、必ずしも4名ではなく、赤手拭に相応しい者のみが貰える。 - 直会について
- 「ごりょんさん」のグループごとの日替わりメニュー 鍋、鉢盛など
- 櫛田入り
- 東流は唯一、櫛田入りの際に山を浮かせて走るので、地面に山笠の銅金(鉄沓)の爪痕が残っていないそうです。
四番山 中洲流
博多人形会館 松月堂 専務取締役 比山 善博さん
- 舁山(かきやま)でのポジション
- 見送り 右方2番、3番
- 町内での山笠の内容について
- 5町で構成され、町内役員と中洲流役員がいます。
赤手拭は各町より2~3名くらい任命 約20名位 若手教育担当
7月に入ると飾り山の当番の時に若手の勉強会が行われる。
比山さんは、今年は喪中の年にあたるので、山笠に出たくても出られません。
今年の山笠は、脇役に徹します!とおっしゃっておられました。
- 赤手拭について
- 比山さんは、途中会社勤めをされていた関係で、赤手拭は30歳の頃から。
赤手拭を7年、衛生4年、庶務、取締2年、町相談役、流委員、町相談役の役をされたベテランです。 - 直会について
- 中洲は料理人が多いので女性はタッチしません。
料理人による鉢盛などが多いです。
五番山 西流
会計 白水建装 白水さん
- 舁山(かきやま)でのポジション
- 鼻取り
- 町内での山笠の内容について
- 西流は5町(冷泉上3町、冷泉下2町)の当番制となっており、5年に1度、本当番、当番が回ってくる形になっており、本当番は15年に1度回ってきます。
山笠は当番町で山を作り、山小屋の場所も当番町に置きます。本当番の地域に山を置くので、毎年山が置かれる場所が変わります。
今年の山は、本当番 冷泉上1 南銀行前に設置されます。当番町は、小屋、山大工、人形師の手配 棒洗い の行事を行います。
6月22日 櫛田神社に奉納している山笠の棒を出し、櫛田の宮司さんよりお祓い。
浜宮パラダイス前で、山笠の棒を海水(塩)で清める。
小屋入り、祈願祭
- 直会について
- 神事の後は直会を行います。
貝汁、味噌汁、昆布、するめ、かまぼこ、酒、ビールなど
六番山 千代流
千代三丁目6区 富岡さん
平成25年千代三丁目6区の町総代
- 舁山(かきやま)でのポジション
- 二番棒 左
- 町内での山笠の内容について
- 戦後に出来た比較的新しい流ですが、やはりそこは山笠好きの博多っ子!
今年で65年目の千代流は、一丁目から六丁目の区割り24町と、千代小学校、千代中学校で構成された3,000人~規模の大集団の流となりました。
写真左 千代流当番法被・写真右 千代流使用の締込の反物
左に写っている反物は一般に使用。
千代流の締込は、相撲用と同じ反物を使っているので、普段使っている締込より分厚くなります。
- 赤手拭について
- 20歳の時に、赤手拭を飛び越え、取締に任命されました。
町内に若手が居なかったこともありますが、雑用とか、なんでもしました。 - 直会について
- 昆布、するめ、かまぼこ、鉢盛、貝汁などです。
15日、山笠行事が全て終わった後は、キュウリ絶ちの解禁で、山盛りのキュウリの漬物が出ます。
七番山 恵比須流
下竪町 堀 武志さん 堀米穀店経営
櫛田神社責任役員4人のうちの一人 山笠振興会の参与
- 舁山(かきやま)でのポジション
- 全てが出来るベテラン。
- 町内での山笠の内容について
- 博多どんたく松ばやしと博多祇園山笠に参加する町内であり、800年以上の伝統を守るため、昔からのしきたりに則り祭りを進行している。
櫛田神社責任役員と山笠振興会の参与と言われるだけあり、年間行事のスケジュール表を見せて頂きましたが、行事は毎月数回行われておりビッシリ詰まっておられました。
恵比須流れは大黒流れと共に6月8日に、櫛田神社に奉納している山笠の棒を出し、神事、棒洗いが博多港で行われました。
長法被は、行事以外は着用しない。長法被を着ると暑そうに見えますが、案外と涼しいですよ。
- 直会について
- 各町内に「ごりょんさん」のグループがあり、町内のメニューは各町内で違うそうです。
昆布、するめ、かまぼこの他に鍋などが多いとか。
7月1日~7月15日 山笠期間中限定販売中の祇園饅頭 櫛田神社にて7月1日撮影
博多伝統工芸館にて 7月1日撮影
博多の街は、早くも山笠モードに突入しました。
取材を終えて
今回、取材にご協力してくださった博多っ子の皆さまは、とても人情深く温かい方ばかりで山笠の楽しいお話を沢山伺うことができました。
本当にありがとうございました。
極一部の方々に、お話を伺いましたが、今回の取材で、改めて733年もの長い年月を過ぎても尚、継承される博多祇園山笠の話は、本当に奥が深く、まだまだ知りたいことが沢山あることに気付かされました。
来年も、また山笠の季節に突撃取材を行う予定です。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。